HOUSE

坊屋敷町の家

コンセプト

敷地は、近鉄奈良駅から徒歩数分の位置であるにもかかわらず、喧騒から切り離され古い家並が残る地区。表通りから枝分かれした袋小路の突き当りの狭小地である。建築主は大学院の教授と奥様で、当面はセカンドハウスとして住まわれ、徐々に生活の比重をこちらに移す予定である。
構造の堅牢さ、メンテナンスのしやすさ、自然素材の多用、空調なしの生活がしやすいよう通風に留意するなどの諸希望に加え、将来身体が弱ったときに1階のみで生活できるよう1階に生活機能のすべてを集めることが求められた。限られた面積にこれらの希望をコンパクトにまとめるという課題に対し、食堂-居間-和室をひとつながりの長い空間とし、通風とともに視線の抜けを確保して狭さを感じない空間を実現できた。
外壁はメンテナンスの楽な黒いガルバリウム鋼板サイディングとした。見方によっては、焼杉板壁や町屋特有の面格子に見えなくもない。
使用材料は、落ち着いた居住空間を実現するため、自然素材にこだわってひとつひとつ吟味した。構造材は、土台のみ米ヒバで残りは間柱等を含めすべてヒノキ材とした。内壁は、化学物質を含まない火山灰の左官壁とし、揮発性化学物質を吸収させた。床材は、ありとあらゆる床暖房対応商品を調べ、最終的に燻製にしたアッシュ(タモ)材とした。気温や湿度が上下しても寸法変形や反りがほとんど発生しない優れものである。
その他、玄関と食堂を間仕切る壁に無双窓を設けて通風とプライバシーの確保を両立させたり、小上がりの和室床下の引き出し収納や階段下収納などコンパクトな家でも十分な収納量とするなど、使い勝手いの良い住宅を実現するため、細かい工夫も満載の住宅となった。

建物概要

主要用途専用住宅
所在地:奈良県奈良市
敷地面積95㎡
延床面積103㎡
構造・規模木造在来工法/2F建て
施工(株)ケイアイエス
設計期間2006.06~2007.07
施工期間2007.08~2008.03
写真撮影生田将人
2020-10-20 | Posted in HOUSE, WORKS