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先生へ

8年前。
まだ、事務所を設立しておらずにフリーの設計屋だった私。
ある設計事務所さんの物件の現場監理をしていた。
大阪土佐堀にある、築100年近く経つ眼科病院の改装工事である。
昭和レトロでどこかアール・デコを感じる重厚な鉄筋コンクリートのビルだった。
大阪でも珍しい建物なのか、よくドラマの撮影に使われたとのこと。
院長先生はスラリとした長身で音楽をこよなく愛す70代前半の紳士でらした。
当時30代前半だった私の憧れの人だった。
新しい病院で不要になったからと、待合で使われていたベッドになる椅子2脚と、
レコード収納用のアンティーク家具を頂いた。
今でも我が家のリビングで使わせてもらっている。
その先生が昨年、病によって他界されたとの悲しい知らせがあった。
遊びに行こう行こうとおもっていたのになぜ行かなかったのか残念でしかたがなかった。
その後、奥様とお電話で話した。
まだ亡くなられてから日が浅く、どうしたら良いのか分からないのよと悲しみに伏されていた。
その奥様から先月。先生の一年祭のご案内が届いた。悩まず即返信した。
そして今日。大阪の某有名ホテルの最上階のホールでそれが執り行われた。
隅の方でひっそりと参加させてもらおうと思っていたのに、
円卓の奥様の隣の席に案内される。しかもフルコースを頂く。(オニギリを頬張ってから挑んだのが悔やまれた)
ティータイムでは生前に親交のあられた歌手の菅原洋一さんのミニコンサートを聴く。
先生に値なんだ選曲とやさしい歌声に涙が伝った。
初めての方々と囲む席は終始緊張の時間だったが、
場を楽しみ微笑む先生の姿を感じる素敵な時間だった。
(さ)

2013-10-16 | Posted in OLD BLOG
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