ユバスキュラ アアルト夏の家へ
我々の旅の朝は早い。
タイマーセットが日に日に早くなる目覚まし時計。
今日は4時20分にセット。
なぜか二人とも素直にすっくと起きる。
(さ)はおもむろにキッチンに立ち、旅の車中で食べるつもりのサンドウィッチを作る。
(は)は山へ芝刈りに・・・、では無く。
そうそう川でもなく・・・。
ガイドブックと地図と小型PCで本日訪れる「ユバスキュラ」を調べる。
6:12AM ヘルシンキ中央駅発。
ヨーロッパの列車は静かに発車する。
深々とする車内は、なぜか我々を緊張させる。
なんせ、ちゃんと日本で予約したアアルトの夏の家(実験住宅)[別名:コエタロ]にたどり着けるのかが不安なのである。
また、あまりの早さに駅窓口がオープンしておらず、
日本から準備していたフィンレイルパス
(フィンランドの中を期日中自由に使えるフリーチケット)
に押すべき印を押してもらわないままの乗車だったからである。
ガイドブックには、もしそれが見つかると罰金っ!なんて書いてある。
冗談じゃない。
こちとら好きで押してもらわなかった訳じゃないってんだ。てやんでー。
しかも、トーマスクック(ヨーロッパ全土の主な列車時刻表)で全く意味が分からなかった[P]という文字。
どうやら[PENDOLINO]フィンランド語で全席予約車とな。
予約なんてしとりゃーせんがな・・・。どないしよ。
という状態だったからである。
で、発車から数10分。車掌登場。
事情を話す。もちろん英語で。・・・と身振り手振りで。
どうやら、大したことでもないように日付だけ書きなさいとのこと。
なんせガラガラの車内。早朝列車だからこそだろう。
帰りはちゃんと予約しよう。
9:30AM ユバスキュラ着
インフォメーションを探す。
駅から5分ほど北へ歩くとすぐ見つかる。
地図とバスの1dayチケットを購入する。
今日行く予定の「セイナッツァロの町役場」、「夏の家」の場所を聞くもざっくりした地図しかなく、とにかく遠いことだけ分かる。
近くにお店も何も無いようなところだろうからとスーパーでランチ(パンとジュース程度)を購入しておく。
21番のバスで40分。
ようやくそれらしい場所で停車ボタンを押す。
と、言うより木の間からアアルトの赤レンガが見えたのである。
実際来るまではあまり重要視していなかった役場。
結果、この旅で一、二を争う良かった建築の一つとなる。
とにかくボリュームがいい。
外観は2層に見えて多少威圧感を覚えるが、中庭からの眺めは平屋であり、(小山を囲むように建物が配置されているので中庭からは2階が見えるのである)住宅レベルの大きさである。
入り口が分かりにくく少し外周でもたついたが、スッと表に開いた階段からのアプローチから受付らしいドアを見つけた。
いい。
あいにくの雨の日であったけど(その後ほとんどが雨の日であった)、中庭の見え方、木の開口部とレンガの床がいい感じで心和む。
あと、会議場が良かった。
重々しくはあるが、随所からやさしく入る自然光が美しい。
レンガの壁と床。木組み天井。うるさくなりそうな素材たちが本当にいい感じでまとまっているのである。不思議だ。
とにかく食い入るように見回る。
途中、いかにも大学生の日本の建築少年たちと遭遇。
思わず声をかけてしまった(決して逆ナンパじゃない)
聞けば、このあと実験住宅にも行くらしい。
シメシメ。着いてくぞぉ~君たちに。
全く大人気ない我々は、老いては子に従え根性でこれでたどり着けるとほっと安堵したのであった。
町役場からさらに20分ほどバスに揺られ、ようやく実験住宅があるであろう最寄バス停留所に到着。
迷い迷ってようやくそれらしい門扉を見つける。
見落としそうな木の門扉・・・。
当然建築少年たちが見つけてくれた。
ははは・・・。
予約時間通りに敷地内からカワユシフィンランドギャル登場。
もしやアナタが案内者?
流暢な英語で淡々と説明が始まる。
(フィンランド人は大方が英語ペラペラ。母国語はフィンランド語である)
思いのほか敷地は険しい。
あまり整備されていない獣道である。
そこに点在する建物を順番に観て廻る。
アアルト設計のボートが展示してある小屋。
コンペで設計者が決まったらしい。
アアルト設計のサウナ小屋。
残念ながら内部は見せてもらえなかった。
そして、実験住宅である。
建物外周を半周廻ってから、中庭からのアプローチであった。
いきなり、見覚えのある外壁。
50種の試みを配した外壁デザインは実験というより計算しつくされたコラージュのようだった。
ビニール袋を手渡され,靴のままそれをかぶせて部屋の中に。
内部は、当時のままのインテリアが配されている。
少しゴチャゴチャしているか?
ん?なんだ?あのカーテンは・・・。
言い忘れていたが、屋根の補修工事がされていてブルーシートが屋根の一部を覆っていた。
はるばるやって来たのだが、正直言うと少し残念大賞であった。
帰りは、停留所のベンチで冷たい雨の中1時間。行ったばかりのバスを待つのであった。
列車を乗り継ぎ片道4時間強。ようやくアパートに帰り(もうすっかりホテルの感覚は無い)冷え切った体に暖かいスープを作る。
レンジでチンするだけのミートボールパスタ。
美味。
(さ)